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あの『時刻表2万キロ』に匹敵 |
風景印の存在を知らなかった私ですが、読みながら、「そうだ。こんど風景印を押印してもらおう!」とワクワクさせられました。で、実際にいちばん近所の郵便局に行ってみたわけですが、本から影響を受けて実行に移すというのは、久しぶりの経験であり、本という媒体の持つ魅力を再認識させてもらいました。
本書は、ユニークな風景印が満載で気軽に楽しむこともできるし、一方で、日本の多様性を伝えるルポルタージュにもなっていて、たいへん味わい深く、奥も深ーい内容です。故・宮脇俊三氏の名作「時刻表2万キロ」を著者も意識しているようですが、勝るとも劣らない力作だと、私には思えました。
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郵便局から日本が見える |
テーマものの紀行文はいい。テーマの中に一つの小宇宙が体現されているからだ。本書もまさにそんな、風景印収集記というテーマの本。風景印という小宇宙に対する著者のヨロコビ、情熱が文中いっぱいに溢れ、伝わってくる。1ページおきくらいに、風景印の写真や郵便局の写真が掲載されていて、載っている風景印の数は軽く100を超える。私は風景印を全然知らなかったのだが、図版の量でぐいぐい引き込まれた。この図版の多さに著者の意気込みが分かるし、風景印なるものを知らない人が多いと思われる読み手にも、理解が大いに進む。風景印には、各地の名物、名所が描かれていて、著者の含蓄溢れる解説を伴う訪問記と併せて読むと、一層面白い。
また、単なる平板な収集旅行記にとどまらず、「富士山が描かれた風景印」「ユニーク名郵便局」など自由自在な切り口で取り上げ、290ページという、新書にしては厚手な本を飽きさせない工夫も凝らされている。特に琵琶湖沖島、青ヶ島など離島の郵便局ばかり取り上げた8章は、私もそうだが、離島好きにはたまらない1節。風景印収集録としても面白いが、旅行記としても十分水準を越える面白さだ。
郵便局も無限ではない。著者はすでに1万500局を訪問し、残すところあと300局あまりになっているそうだ。こうなったら、感動の全局訪問達成記を続編として書いてほしい。とにかく、日本全国を総覧する「風景印」という新たな視点が本書により、メジャーに押し上げられたという意味で好著。
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郵便事業は文明事業 |
1960年生れの著者が30年余にわたって郵便局を訪ね歩いた。郵便局に関心を持ったはじめは小学生の頃。本格的に廻るようになったのが大学生になってから。それからの30年余である。 郵便局へ向うのは、局で「風景印」を押してもらうためである。「風景印」というのがあるとは知らなかった。それは、その局独自の、その地の風景などと局名を彫ってある直径36mmのスタンプでである。その風景印を未使用の葉書(あるいは切手が印刷されている封筒か)に押印してもらう、あるいは借りて自分で押す。
そうして廻った局数が1万局を超えたという。離島にも行っている。著者はNHK某局の制作グループ副部長という。しかも著者は、「世界遺産」をもライフワークにしていて、そちらでも相当の時間を使っているようだ。
郵便局の近未来がいかがになるか。利用者のひとりとして気がかりである。郵便局が民営化でサービスが偏在し、地域の郵政事業を再構築しつつあるといったアメリカでのレポートをたしかNHKで見たのが一昨年か。五年後には、この本の「続」で日本状況を報告してほしい。
「風景印」とその採集、その意義などについては本書に依られたいが、著者の「趣味」は、かつての「貴族」が存在していた頃の彼らの遊びに似ていると同時に、鋭い文明批評になっている。新書で扱うにはやや異色で、新書洪水の中、新しい潮流を生むきっかけになればと思った。光文社新書には折々この手の分厚い本が混ざる。『アンベードカルの生涯』がその一冊。二段組350ページの本だ。わが書棚にある。今回の『郵便局・・』は290ページにとどまっている。書中で局名を強調印刷し、カラーページを巻頭に8ページおくなど、編集に最大限の努力を払っていることがうかがえて好ましい。

